戸田は政界へと人材を送り続けていたが、それはこんな考えが根底にあったからなのだ。
「“人間”を作ることだ。
……社会のあらゆる分野に、政治のみならず経済や教育や文化など多くの分野に真に優れた人物を送り出すことができる! それらの人たち一人ひとりの偉大な人間革命が、新しい世紀における人類社会に偉大な貢献をすることになる――!!」1956年10月23日、ハンガリーで動乱が勃発。
同29日には、第一次スエズ戦争勃発。
「……結局、東西両陣営の利害の狭間で苦しむのは、民衆だ。
民主主義にしろ共産主義にしろ相争うために考え出されたものではないはずだ。
それなのに、この二つの思想が地球上で、政治に経済に、相争うものを作り出しているのは悲しむべきことだ……一日も早くこの地上から悲惨の二字をなくさねばならない」青年部はまさに荒海にはねる鯱だ。
強靭そのものになった。
伸一がいる限り青年部の育成はもはや心配はない。
やがて伸一が育てた青年たちが、鯱の大群となって、末法濁悪の荒海で、広布に挺身するようになる。
その時が楽しみだ……。
「この日本を変える力――それが君たち青年部の存在だ!」 逞しく成長を続ける青年たちの輝く誇らしげな表情に、戸田は満足げに微笑んだ。
公職選挙法違反の容疑により、山本に大阪府警から出頭要請が出された。
取り調べを受けた山本は、何とそのまま逮捕されてしまったのだ! 「仏法は人々を苦悩から解放する幸福のための、人間のための宗教だ。
それに対して権力は力をもって民衆を隷属させ、支配しようとする。
この人間支配への飽くなき欲望が“権力の魔性”だ。
そして、権力は民衆を支配する手段として常に宗教を利用して人々の精神を帰伏させようとしてきた……」大戦を経たにもかかわらず、世界から争いは消えない。
「米ソをはじめとする東西両陣営は、互いに核兵器の開発に躍起となり盛んに原水爆実験を繰り返している。
これは人類の自殺行為にほかならないことは明らかだ。
核兵器が戦争の抑止力になり、それによって平和が維持されるという者もいる。
しかし、その考え自体が人間精神の悪魔的産物ではなかろうか」 すべての人類の平和のために、戸田の思索は深化してゆく……。
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